院長インタビュー
院長 清水 良祐

地域に根ざして30年
3代続く「なんでも診る」町医者の想い
開業の経緯を教えてください

私の父が26年間この地で開業医として診療を続けていました。私は金沢医大と奈良医大で学び、市立松原病院で6年半から7年近く勤務していたのです。その時に父が急逝しまして、そのまま医院を継ぐことになりました。
父の専門は外科でしたが、地域の患者様のニーズに応えて「なんでも診る」スタイルで診療していました。私も外科医として研鑽を積んでいたため、父が亡くなって清水医院を継承する際、内科の知識がなくて本当に苦労しました。必死で勉強しながら、患者様を待たせないよう診療を続けてきました。
それから約30年。この松原の地で父の築いた伝統を守りながら、地域医療に携わってきました。今では息子も加わり、3代にわたってこの地域の健康を守らせていただいています。
診療理念や大切にしていることは?
私が大切にしているのは「熱意」「笑い」「体力」の3つです。まず「熱意」。患者様に、こちらのパワーを感じてもらうことが大切です。こちらの熱意がなかったら、患者様には何も伝わりません。
次に「笑い」。特に在宅医療では、暗い場面が多くなりがちです。看取りが近い時でも、場の雰囲気を読みながらある程度の笑いを入れて、家族だと思って接することが重要です。大阪人ですからね、笑いは欠かせません。
そして「体力」。夜中の往診も多いですから、体力がないとやっていけません。「アットホームで、コミュニケーションが取りやすい」。家族を守ってくれるような、そんな医院でありたいと思っています。

在宅医療への熱い思い
24時間365日、地域の命を守る
在宅医療について教えてください

私が特に力を入れているのが在宅医療です。外来と在宅、半々くらいの割合でやってきました。
今は病院で最期を迎えることも難しく、介護施設か家か、選択肢は限られています。在宅で医療を受けたり最期を迎えたりする方が、おそらく患者様にとっても良いことが多いでしょう。
「2025年問題」と言われるように、在宅医療の需要は確実に増えています。病院からあふれる患者様をどう支えるかが重大な課題です。待ってくれている患者様のためであれば、昼夜問わず、また自転車やバイクなど色んな手段を駆使して訪問に行きます。
どのような患者様が多い?
長年この地で診療していますから、昔からの患者様が多いですね。100歳でも歩いて来院される方もいらっしゃいます。3代、4代にわたって通ってくださる家族もいて、おじいちゃんを診て、お父さんを診て、今は孫を診ている。そういう関係は本当にありがたいです。お母さんが風邪を引いていて、一緒に子供も診てほしいということもよくあります。
松原は「自転車の町」と言われるくらい自転車が多く道も狭いです。その分自然と人との距離も近くなり、患者様とも家族のようなお付き合いができるのです。都会じゃないからこそ、地域のつながりを大切にした医療ができると思っています。

患者様との対話を大切に
いつでも寄り添う診療スタイル
診療で心がけていることは?

まず、患者様の話をしっかり聞くことです。慢性的な痛みを抱えている方は、精神的にもつらい思いをしている方がほとんどです。しっかりと話を聞くだけで、痛みが和らぐこともあります。
診療時間内に十分な時間が取れない場合は、診療時間が終わってから来てもらうこともあります。しっかりと時間を確保してコミュニケーションを取ったほうが良い方は、時間外に対応することもありますね。
あと、予約制にはしていません。もしもスマートフォンで予約できるようにしたら、若い人ばかりが先になってしまうかもしれませんしね。ご高齢の方も気軽に来院できるように対応しています。20時まで診療しているので、サラリーマンの方も仕事帰りに飛び込みで来られます。
清水医院の強みを教えてください
患者様の要望や訴え、人柄に合わせて診るという点でしょうか。
禁煙外来で例えると、薬だけに頼らない指導をしています。禁煙は心理的なアプローチが本当に重要です。タバコは視覚、聴覚、嗅覚、味覚、すべての感覚に関わる行動です。例えば、仏壇で線香をあげる行動は、ライターの音、線香の匂い、煙、すべてがタバコを吸う行動と関連しているので、喫煙の代替になるのです。そのような感じで、タバコに代わる行動や趣味を見つけることが大切。音楽でも、香りでも、読書でも、その人に合った趣味を見つけてもらうようサポートします。
私は麻酔科の経験もあるので、痛みのコントロールも可能です。巻き爪の治療も患者様の要望から始めました。そのような感じで「なんでも診る」という父の精神を受け継いで、患者様のニーズに応えています。

息子との二人三脚で新たなステージへ
伝統を守りながら進化する医療
副院長就任による変化は?

息子が戻ってきてくれて、本当に心強く思っています。訪問診療も一人でやっていたのが二人になって、体力的にずいぶん楽になりました。
私と息子では診療スタイルが全然違います。私は長年の経験を活かし、患者様のために必要なことは率直にお伝えする診療スタイルです。息子は平成、令和の医者で、もっと優しいですね。患者様によって相性がありますから、私たちのようにタイプの違う医者がいて良いと思いますね。
今は新しい患者様は息子に任せて、私は昔からの患者様の診察と在宅医療を中心にやっています。ゆっくりと世代交代を進めようと思っていますが、私自身もまだまだ現役で頑張ります。68歳ですが、ラグビーをやっていたおかげで体力には自信があります。
最後にメッセージをお願いします
清水医院は、祖父の代から「なんでも相談できる町医者」としてやってきました。専門的な治療が必要な時は、適切な病院を紹介します。でも、まずは気軽に相談に来てください。
息子もいつも言っているように、友達に相談するような感覚で来ていただいて構いません。私たちは、この松原の町の健康を守る、身近な存在でありたいと思っています。
どこの科に行けば良いかわからない時も、とりあえず相談に来てください。3代にわたって築いてきた信頼関係を大切に、これからも地域医療に貢献していきたいと思います。
副院長インタビュー
副院長 清水 克修

大病院での経験を地域医療へ
新しい風を吹き込む3代目の挑戦
クリニックの診療に参加した経緯は?

初めから実家の医院を継ぐつもりで動いていました。祖父が急逝して医院を継承する際、内科の経験が浅い父は大変苦労していたのを見ていました。その経験から、将来クリニックを継承するためには幅広い知識が必要だと思い、加古川中央市民病院、堺市立総合医療センター、大阪市総合医療センターと、3つの大きな病院を勤務しました。外科や救急、内科など色んな診療科を経験し、地域医療で求められる幅広い診療に対応できる経験を積めたと思っています。
大きな病院では重症例や希少疾患を扱うことが多かったですが、地域のクリニックでは風邪や熱中症など、日常的な疾患がメインで、診療内容は完全に逆転しました。でも、いろんな病院や診療科で知識や経験を培ったおかげで、地域医療に活かせることができていると感じています。
副院長としての診療理念は?
一言で言うと「気軽に」ですね。なんでも診ます。大阪市総合医療センターの総合診療科にいた頃は様々な訴えで来られた患者様の病気を見つけて、適切な専門科に采配する仕事を担当していたので、なんでも診られると思います。
その経験を活かして、ここでも同じスタイルで診療しています。自分で診られる範囲は診ますが、どこの科に行けば良いのかわからないという相談も受けます。病院に行った方が良いのか、行くなら何科なのか、そういったアドバイスも重要だと考えています。
医者と患者という関係ではなく、友達にちょっと相談するぐらいの感じで良いのです。緊張せずに来ていただければと思いますね。

幅広い知識で「なんでも診る」
患者様に合わせた柔軟な対応
診療で大切にしていることは?

この町は下町なので、友達のように楽に話しかけてくださる方も多いです。そういう方にはこちらも同じように、変にかしこまらずに楽に話します。でも、きちんと敬語で話される方にはこちらも敬語で。固くなりすぎず、緊張感を与えないよう心がけています。
思っていたより難しいのは、患者様の症状に応じて必要な知識や診断をスピード感を持って引き出すことです。大きな病院では専門性の高い限られた疾患を診ることが多かったのですが、ここでは幅広い症状の患者様を診察する必要があり、何を聞かれてもぱっと答えられるぐらいの知識のストックとスピード感が必要です。ようやく慣れてきましたが、まだまだ経験が必要だなと日々感じています。
生活習慣病への取り組みは?
清水医院の診療に参加してから思うのは、ほとんどの方が生活習慣病を抱えているということです。総合病院では、それらの病気の結果起こる心筋梗塞や脳梗塞という重い病気を診ていました。でも今は、重篤な疾患をいかに予防するか?という立場にいます。
今を治しているのはもちろんのこと、5年後、10年後の将来を診ているという感覚を大切にしています。病気を起こさないようにすることが本当に重要だと意識しています。こまめに来てくださる方も多いので、定期的な診察で少しずつ生活指導をしています。まとめて言っても記憶に残りにくいので、「今日はこれだけ覚えて帰ってくださいね」という感じで。

継続できる治療を目指して
患者様の気持ちに寄り添う処方
治療の継続で工夫していることは?

治療が続けられなかったとしても、絶対に責めません。治療を継続できなかった患者様を責めても何も始まりませんので。
なぜ薬が嫌になったのかを聞きます。朝晩2回の内薬が忘れてしまうなら、1回だけにしてみる。それでも難しければ、1日おきにしてみましょうかと。試しに止めてみてどうなるか提案して、その代わり血圧の記録を家でつけてもらうことを提案することもあります。
患者様がどういう要望を持っているのかをできるだけ聞き出して、それに沿うようにします。朝昼晩3回の内薬の場合、どれかが抜けてしまうことが多いですね。特にお昼は仕事をしていると飲めない。だから、できるだけシンプルな処方を心がけています。
患者様は子供から高齢者まで幅広い?
3歳ぐらいのお子様もいますね。清水医院は小児科ではないですが、できる限り皆さんの対応をしています。でもどうしても判断できない時は、こちらも責任を持って専門の診療科を受診してもらうよう伝えます。やけどや怪我といった子供の外科治療の対応をすることもありますね。ただ幼い子供の場合、麻酔が必要な場合は専門の病院にお願いしています。
皮膚科の相談も実は多いです。判断に迷う場合は皮膚科を勧めますができる範囲で対応しています。色んなニーズに応えるために、今後は顕微鏡を導入して、水虫の検査なども自分でできるようにしたいと考えています。

訪問診療への新たな挑戦
救急の知識を活かした在宅医療
訪問診療について教えてください

ここに来て初めて訪問診療を経験しました。引き継ぐことはわかっていましたが、外来とはまた違う世界ですね。いろんなお家があって面白いです。家でゆっくり話せるというメリットもあります。ただ、緊急度の判断が重要です。そのまま在宅で診ても良いのか、一旦病院に行かなければならないのか。救急の知識がそこで役立っていると実感します。
多くの患者様のお家を訪問する必要があるので、父をはじめ訪問看護ステーションなど様々な人と連携してチームで医療を実践しています。松原という町は車での移動が大変で、道が狭くて自転車が多いです。行き止まりも多いし、通行止めになるような道ばかり…。最初は地図を覚えるのが大変でしたが、今は大体わかるようになりました。
最後にメッセージをお願いします
3代目として今まで築き上げてきたスタイルは壊さないよう、伝統を継承しつつ、新しいことにも挑戦していきたいと思います。
なんでも相談できる町医者として、どんな小さな悩みでも気軽に来てください。どこの科に行けば良いかわからない時の相談窓口としても機能したいと思っています。
若い世代の患者様から高齢の患者様まで、それぞれに合わせた診療を心がけています。父とは診療スタイルが違いますが、患者様によって相性があるのでそれが良いと感じています。これからも父と二人三脚で、この松原の地域医療を支えていきたいと思います。